H27.3.15 彼岸法要後 松岩寺の本堂にストラディヴァリウスが響く


天満敦子ヴァイオリンコンサート

プログラム

アルマンド J.S.バッハ           鳥の歌 カタロニア民謡(P.カザルス編曲)
タイスの瞑想曲 F.マスネ           シチリアーノ G.フォーレ
祈り E.ブロッホ               ホーム・スイート・ホーム H.ビショップ
古謡 竹内邦光                 中国地方の子守歌 山田耕筰(和田薫編曲)
落葉松 小林秀雄                望郷のバラード C.ボルムベスク              ジュピター G.ホルスト




 天満敦子著『わが心の歌』(文藝春秋刊)の帯には「この国にこんなヴァイオリニストがいたのか」とあります。『わが心の歌』が出版されたのは平成十二年。初版を買い求めて数ページ読んだだけで、それから長きにわたって本棚でほこりをかぶったままになっていました。どういうことかと白状すると、平成十年七月から一年間、朝日新聞に芥川賞作家・高樹のぶ子さんが『百年の預言』という小説を連載した。その主人公のモデルが天満敦子さん。天満敦子さんと面識がある義母から、
「すごい人気ね。お寺で天満さんに演奏してもらいなさい」
と言われて参考資料に求めたけれど、クラシック音楽界では、「事件」ともいえるほど売れている人気者を呼ぶなんて無理!と思って気がすすまず、著書も読みかけでほっといたわけ。
 それから十数年。彼岸法要の後に落語やったり音楽をやったりして、楽しみに来てくれる人も増えて、そろそろ天満さんを呼んでも失礼にならないかなと思って、満を持して三月十五日に予定がとれた。そこで、読んだのが『わが心の歌』というわけです。
 この本、〈望郷のバラード〉という曲との出会いをとおして、天満さんのそれまでをふりかえっています。その曲との出会いが格好良すぎるんです。キーワードをあげれば、亡命・革命・ウィーンの外交官、それにヴァイオリニストが偶然で結びつく。まるで、小説みたい。だから、作家が前述の『百年の預言』を書いたのです。ただし、「モデルは天満敦子で、行為は高樹のぶ子」とのこと。つまり、小説だから事実とは異なる部分も多い。詳しく書くには紙面が小さすぎるので、手もとにあるCDの解説の一節を引用します。
「人の運命を決めるのは〈巡り会い〉である。彼女は〈人〉と巡り会い、〈曲〉と巡り会った。そして、幸運を招き寄せた。しかし、この曲を広めたのは天満敦子その人であると言いたい」
 松岩寺の本堂に、ストラディヴァリウスが響きました。


2017年01月19日